竹田城跡から見る雲海風景

竹田城の雲海を楽しむには

雲海(朝霧)に包まれた竹田城は「天空の城」と謡われ、訪れる者を圧倒する迫力がある。竹田城跡は兵庫県朝来市和田山町にある山城だ。集落は山の麓にあり、円山川と播但街道が通る。ベストシーズンは晩秋。放射冷却により、主に円山川から発生した朝霧で、竹田城が覆われ、いかにも戦国といった幻想的な風景となる。朝霧をその上から(竹田城や立雲峡から)観た場合、海のように広がる景色から、これを雲海という。朝霧は自然現象のため、竹田城の雲海は、いつ行っても見られるという訳ではない。竹田城に行く際は、雲海が発生する条件をしっかりおさえてから行くことが大切だ。

竹田城の歴史を簡単に

竹田城(たけだじょう)は、標高353.7mの古城山にそびえる山城。播但街道、山陰街道が通り山陰地方、山陽地方、京都を結ぶ要所にあり、秀吉の中国侵攻で天正5年(1577)、竹田城は陥落し、秀吉配下となった赤松広秀によって修築され現在の姿となる。本丸から伸びる三方の尾根に曲輪が設けられている。竹田城の見どころと歴史について詳しくは下記ページで紹介しているので興味のある方はご参照を。

竹田城の雲海を捉える絶景撮影スポット3選+α

竹田城の雲海を美しく捉える主な写真アングルは3つ。「竹田城天守台」と「立雲峡(りつうんきょう)」と「藤和峠(ふじわとうげ)」だ。それぞれ絵的な特徴が異なる。マチュピチュ的な遺跡らしさなら天守台から、雲海に浮かぶ風景なら立雲峡から、シルエットで竹田城を捉えるなら藤和峠で、雲海が出現している時間が短いため一度に全てをめぐることは難しい。ではそれぞれの特徴を見ていこう。

竹田城天守台から

レンズ焦点距離:28mm

竹田城(天守台から南千畳を望む)竹田城といえば日本のマチュピチュとも称されるが、それがまさにこの風景。天守台から南千畳を捉えたアングルだ。ちなにこのアングルは、天守台の東南角からの撮影で竹田城ブーム到来前のもの。今は南千畳に通路が設置されゴムシートなどがひかれているが、その構造美たるやこれに勝る風景は無いと言っていい。

立雲峡から

レンズ焦点距離:100〜180mm

立雲峡から望む竹田城竹田城の東南にある朝来山「立雲峡(りつうんきょう)」に登れば、竹田城跡のある虎臥山全体が望める。雲海シーズンになれば、雲海に浮かぶ船のようにアングルが得られる撮影ポイントで有名だ。

藤和峠から

レンズ焦点距離:125mm〜200mm

藤和峠から望む竹田城竹田城から県道136号線を西へ約2kmに位置する藤和峠(ふじわとうげ)。ドアツードアで見られるポイント。竹田城を西側から望むため、竹田城がシルエットとなる眺望が得られる。明け方は朝日とセットに撮影もできる。

竹田城の雲海スポットそのほか

大倉部山から

大倉部山は標高651m。北側にある観音寺から完全登山90分で山頂に。松茸山でもあるので入山が禁止されているエリアや期間があるらしい。竹田城より標高が高いため、見下ろすかたちとなる。

金梨山から

金梨山は標高442m。立雲峡のある北側の山。円山川付近から完全登山。岩谷大権現付近から竹田城を望めるらしいが、巨大な岩が少し邪魔するらしい。

但馬自然学校から

立雲峡のさらに東に位置する「但馬自然学校」に2014年に見晴らし台が設置された。同学校が開校20周年を記念し、見晴らし台を2014年5月7日に新設。一般利用は、自然学校の利用がない時に15人以上の団体で事前に予約すれば利用できる。

竹田城跡へのアクセス

駐車場は「山城の郷」

「山城の郷」の駐車場を利用する。そこから天空バスで中腹バス停まで約10分。徒歩20分で城跡へ。
また、城下町にある「まちなか観光駐車場」「城下町観光駐車場」から徒歩約10分でJR竹田駅前から出ている天空バスで約20分で中腹バス停。徒歩約20分で城跡へ(詳しくはGoogleマップを参照)。

山城の郷

下記、備忘録として書いておく。
ブーム到来前の竹田城は、天守台のある本丸の回りに「花屋敷」「南千畳」「北千畳」と3つの郭が羽を広げるようにあることを頭に置いていただいて(上図参照)、車を駐車できる場所は、花屋敷方面と、北千畳方面(大手門跡前)の2ヶ所だった。その昔は大手門跡前の駐車スペースが便利だったが、現在はその道は徒歩のみ通行可となり、車は入れない。この大手門前、実は3台が限界だった。それ以上停めるとUターンができなくなるため、常連さんが寝ずに見ていて入ってくる車に注意をしていた。暗黙の運用ルールで良い時代だった。

鉄道アクセスの場合

鉄道でのアクセスの場合は、JR竹田駅となりの和田山駅付近のホテルに泊まり、タクシー利用が良い(和田山駅から現地まで車で約20分)。運行は朝5時以降。タクシーは要予約(朝は台数が少ないため)。「竹田城の雲海が見たい」と言えば、対応してくれる。

竹田駅

タクシー

なお、夜明け前の風景は興味がなく、写真こだわり派でもない場合は、朝6時とか7時とかのタクシー利用で日の出から1〜2時間ほど出ている雲海を楽しめる。時期により異なるのでタクシー会社に相談するも良いかも。

全但タクシー TEL:079-672-2807
旭タクシー TEL:079-672-3221
ふく福タクシー TEL:079-670-1269

竹田城の雲海ブームいつから?その起源

竹田城跡そのものは、筆者の知る限り1990年代から、城好きの人々には知られ、また、近郊の写真家たちにも知られた遺跡スポットだった。この頃は、キャッチコピーが存在していなかったが、それでもごく一部のパソコン通信内で「天空の城」と言われていた。また、竹田城の雲海写真は、地元のカメラマン、吉田利栄氏の撮影が多く、その造詣のみならず表情の多彩さで群を抜いており、その絵が世の中を動かした。

1996年から日本ではインターネットがはじめてニュース報道され広まりを見せ始める。この頃から城郭カメラマンである筆者は出版物やネット上などで「天空の城」に加え、「日本のマチュピチュ」と随所で記載するようにした。コアなファン層の外へリーチできるこういったキャッチコピーは、筆者のみならず竹田城跡を愛する人々の手によって広まり、やがて飽和し認知されるようになっていくのだが、何よりも大阪や阪神間から車で2時間ほどの距離にあるというのが、爆発的に広まる大きなきっかけとなった。

同じ天空の城で比べると備中松山城の方が、現存天守を有する雲海風景なので有名になりそうなものだが、今で言うところのSNSで「シェア」する人口に差があったのではないかと思われる。雲海のボリュームや情景に差はあれど今やネット上には数え切れない雲海写真がある。その後、竹田城跡は多数の来場者による土の流出やこれによる石垣の弱体化、山に慣れていない登山者の事故などが起こり、2012年、朝来市は竹田城課を設置、交通問題の解消やインフラ整備、遺跡の保護などに乗り出した。その後、竹田城跡は2016年、サントリー「プレミアムボス」CM、プレミアム城跡編で竹田城の雲海風景が出たことで、揺るぎない雲海の城として認知された。

(文・写真:城郭カメラマン 岡 泰行)

天空の城は、ほかにも。

岡山県高梁市にある備中松山城は、現存天守を有する名城。越前大野城は福井県にある城だ。まだあまり知られていないこの2城も要チェック!

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