日本にかつては多くの天守があった。織田信長以降、約170ほどの天守が建てられたという。このうち現在まで残る天守は12城だ。これを「現存12天守」という。江戸期の一国一城令による破却や天災でその数を約150城まで減らし、維新後、明治政府の廃城令に伴う撤去などで多くの城が天守を失い約60城が残った。その後も減少を続け第二次大戦前までは、20城の天守が現存していたが空襲や火災などにより8つの天守を消失し現在の12城となった。ここでは今に残る貴重な現存12天守を紹介する。
余談ながら「天守閣」という呼称は、明治時代前後に見られるようになった俗称で、正しくは「天守」いい、文化庁の文化財指定も「天守」と表記されている。現在、自治体によってどちらの呼称で呼ぶのか多少の温度差がある。また、出版社の文字校正の認識もアップデートされていないケースが多い。今後は是非「天守」の表記を用いてほしい。
現存12天守の文化財指定は、国宝5城・重要文化財7城
文化財指定は、もとは「国宝保存法」という昭和4年に制定された法律で、その時、国宝指定を受けた天守もある。戦後の昭和25年、文化財を再検証し法律自身も見直され新しく生まれたのが「文化財保護法」だ。例えば松山城や松江城はかつて国宝指定を受けていたが、後の文化財保護法で重要文化財に指定替えされた経緯がある(松江城は2015年7月に65年ぶりの国宝指定)。現存天守は、いずれも国宝か重要文化財の指定を受けている。
国宝5城(一覧)
- 
姫路城(兵庫県姫路市) 
 文化財指定:国宝
 (昭和26年6月9日指定)
 天守構造:5重6階、地下1階
 高さ:31.49m
 重量:約5,700t
 建築年代:慶長14年(1609)
- 
犬山城(愛知県犬山市) 
 文化財指定:国宝
 (昭和27年3月29日指定)
 天守構造:3重4階、地下2階
 高さ:18.16m
 建築年代:天正年間1585~90年頃
- 
彦根城(滋賀県彦根市) 
 文化財指定:国宝
 (昭和27年3月29日指定)
 天守構造:3重3階、地下1階
 高さ:15.53m
 建築年代:慶長11年(1606)
- 
松本城(長野県松本市) 
 文化財指定:国宝
 (昭和27年3月29日指定)
 天守構造:5重6階
 高さ:25.25m
 重量:約1000t
 建築年代:元和元年頃(1615年頃)
- 
松江城(島根県松江市) 
 文化財指定:国宝
 (平成27年7月8日指定)
 天守構造:4重5階、地下1階
 高さ:22.43m
 建築年代:慶長16年(1611)
重要文化財7城(一覧)
- 
丸岡城(福井県坂井市) 
 文化財指定:重要文化財
 (昭和9年1月30日指定)
 天守構造:2重3階
 高さ:12.53m
 重量:約75t
 建築年代:天正4年(1576)
- 
高知城(高知県高知市) 
 文化財指定:重要文化財
 (昭和9年1月30日指定)
 天守構造:4重6階
 高さ:18.6m
 建築年代:寛延2年(1749)
- 
宇和島城(愛媛県宇和島市) 
 文化財指定:重要文化財
 (昭和9年1月30日指定)
 天守構造:3重3階
 高さ:15.34m
 建築年代:寛文6年(1666)
- 
伊予松山城(愛媛県松山市) 
 文化財指定:重要文化財
 (昭和10年5月13日指定)
 天守構造:3重3階、地下1階
 高さ:16.1m
 建築年代:嘉永5年(1852)
- 
弘前城(青森県弘前市) 
 文化財指定:重要文化財
 (昭和12年7月29日指定)
 天守構造:3重3階
 高さ:14.46m
 重量:約400t
 建築年代:文化7年(1810)
- 
備中松山城(岡山県高梁市) 
 文化財指定:重要文化財
 (昭和16年5月8日指定)
 天守構造:2重2階
 高さ:10.92m
 建築年代:天和3年(1683)
- 
丸亀城(香川県丸亀市) 
 文化財指定:重要文化財
 (昭和18年6月9日指定)
 天守構造:3重3階
 高さ:14.66m
 建築年代:万治3年(1660)
第二次大戦時に本土空襲で焼失した天守
昭和20年の5月〜8月までの間に7基の天守が失われた。
名古屋城天守(旧国宝):昭和20年5月14日焼失
岡山城天守(旧国宝):昭和20年6月29日焼失
和歌山城天守(旧国宝):昭和20年7月9日焼失
大垣城天守(旧国宝):昭和20年7月29日焼失
水戸城天守(旧国宝):昭和20年8月2日焼失
広島城天守(旧国宝):昭和20年8月6日焼失
福山城天守(旧国宝):昭和20年8月8日焼失
 
    




 
 








