写真・監修:岡 泰行/城郭カメラマン
根城の歴史と見どころ
根城(ねじょう)は、青森県八戸市の馬淵川右岸、標高約20mの段丘上に築かれた南部氏の拠点だ。『八戸家伝記』などによれば、建武元年(1334)、南部師行が後醍醐天皇に従い陸奥に下向した際、この地に根拠地を定めたと伝えられる。師行は陸奥守北畠顕家に随行し、糠部郡を支配する国代として八戸に館を構えたという。
城名の由来については、「奥州の根本の城」すなわち国府支配の根拠地とする説があるが、当初から「根城」と称されたかは定かでない。史料上、南北朝期の記録には「八戸城」とみえ、後世に八戸氏の勢力下で「根城」と呼ばれるようになったと考えられている。
発掘調査では、平安時代後期の住居跡が検出されており、南部氏入部以前の在地豪族の館を改修・拡張した可能性が高い。以後、師行から政長・信政・信光・政光の五代にわたって南朝方として活動し、南北朝合一後もこの地を本拠とした。
天正18年(1590)、南部信直が豊臣秀吉の小田原征伐に参陣して所領を安堵されると、根城南部氏は三戸南部氏の支配下に入る。天正19年(1591)の九戸政実の乱では信直を支援し、のちに三戸に本拠を移した南部家の命により、寛永4年(1627)に南部直栄が遠野へ転封された。これをもって根城の歴史的役割は終焉を迎えたが、約300年にわたり南部氏の政治的中枢として機能した城であったといえる。
現在、城跡は国指定史跡となり、発掘成果にもとづく本丸御殿や門・橋などの復元整備が行われた。往時の中世館構造を体感できる貴重な史跡として八戸の歴史を伝えている。
根城の特徴と構造
根城は南北約650m、東西約410mにおよぶ大規模な平城で、五つの郭から構成されていた。西から本丸・中館・東善寺館が並び、南側に岡前館と沢里館を配する。これらの郭を囲む堀や土塁が今も明瞭に残る。
昭和の発掘調査により、岡前館には深さ約3mの薬研堀が確認され、また東善寺館の東側では二重堀の構造が明らかとなった。さらに堀の外縁には馬淵川が流れ、自然地形を巧みに利用した防御構造であった。
出土品には、中国製青磁・白磁、美濃焼や志野焼の陶磁器、武具・貨幣などがあり、中世北奥の政治的拠点としての繁栄を物語っている。現在は国指定史跡として整備され、本丸跡には当時の館を再現した建物群が復元されている。
参考文献:
- 『日本城郭大系2』(新人物往来社)
- 『史跡根城』(1979八戸市教育委員会)
根城の学びに役立つ本と資料
「史跡根城 料金所」にて、『根城通信』のバックナンバーが販売されている。根城史跡公園の整備計画をはじめ、根城の発掘報告書や南部家に関わる史料を幅広く紹介している。
八戸市博物館
八戸市博物館は、根城に隣接し、八戸の歴史と文化を紹介している。常設展では、縄文時代の遺跡出土品や中世根城に関する資料、南部氏の武具・生活道具などを展示し、八戸の歩みを時代ごとにたどることができる。根城の発掘成果をもとにした模型や映像も充実しており、戦国から近世へと続く八戸の歴史を、地域の風土とともに実感できる博物館。
根城の撮影スポット
公園全体が日当たりが良い。本丸主殿も南向きのため特に撮影時間を気にする必要が無いが、公園内にある八戸城の城門は東向きなので、午前中が良い。
根城の写真集
城郭カメラマンが撮影した「お城めぐりFAN LIBRARY」には、根城の魅力を映す写真が並ぶ。事前に目にしておけば現地での発見が鮮やかになり、旅の余韻もいっそう深まる。根城の周辺史跡を訪ねて
南部直栄が遠野へ移ったのち、この地は一時の空白があり、延宝8年(1680)には盛岡藩の支城として八戸城が築かれた。その本丸跡に鎮座する三八城神社や、長者山新羅神社のある長者山館を巡れば、根城から八戸城へと受け継がれた南部の歴史を肌で感じることができる。
根城の周辺おすすめ名物料理
魚介類の宝庫、三陸沿岸から捕れた最も贅沢なうに、あわびを使ったお吸い物である八戸名物の郷土料理「いちご煮」。潮仕立ての汁の中で、うに、あわびが朝もやのかかった山いちごのようになるのがその由来。寒い冬の「せんべい汁」も面白い。
根城観光のおすすめホテル
八戸駅前に「東横イン八戸駅前」「コンフォートホテル八戸」など。ちなみに繁華街は本八戸駅の方にある。
根城の観光情報・アクセス
所在地
住所:青森県八戸市根城根城47 [MAP] 県別一覧[青森県]
電話:0178-41-1726(史跡根城の広場)
- 公式サイト:「八戸市博物館」(八戸市博物館・史跡根城の広場)
※根城は平成6年(1994)に「史跡根城の広場」として公園化されており本丸のみ有料。
開館時間
「史跡根城の広場」「八戸市博物館前」ともに、9:00~17:00(入館16:30まで)、月曜・祝日の翌日、年末年始閉館。
アクセス
鉄道利用
JR東北本線、八戸駅下車、バス司法センター経由15分「根城バス停」降車、徒歩1分。
マイカー利用
八戸自動車道、八戸ICから10分。八戸市博物館前に無料駐車場有り(24台)。
岡 泰行 | 城郭カメラマン [プロフィール]
1996年よりWebサイト「お城めぐりFAN」を運営し、日本の城郭をめぐる旅をライフワークとする。長年にわたる豊富な経験と、城郭写真家としての専門的な視点から、当サイトの記事を監修。その写真と知見は、数々の書籍やメディアでも高く評価されている。
根城:城ファンたちの記憶
実際に根城を訪れた城ファンの皆さまが綴る、印象に残った景色、人との出会い、歴史メモ、旅のハプニングなど、心に残る旅の記憶を共有しています(全4件)。




中世以前の土塁の城ですが歴史公園として見事に整備され、保存状態が良好で当時の縄張りが実によく見て取れます。本丸の居館が復元されており当時の武士の生活が再現されています。現地のボランティアスタッフが何人かおられ、懇切丁寧に案内していただけました。城好きそうな顔をしているとむこうから声をかけてくれます。
( お城じい)
現地ボランティアガイドは、かなりのレベルの高さ。姫路城のボランティアガイドに匹敵する。
( 又兵衛)
建武元年(1334)、南部師行により築かれたと伝えられている。約300年間代々南部氏の拠点であった(南部家は寛永4年(1627)に遠野へ移封になった)。その後、八戸城が周辺統治の拠点となった。
( しん)
平成6年に本丸内に中世の主殿や厩が復元されています。石垣や櫓、天守閣が発達する前の城の形を再現してあり、戦国前期の城がよく分かります。その他、工房・鍛冶工房・板蔵・納屋なども復元。当時の生活の一場面が人形で再現もしてあり小道具なども凝っていました(越前朝倉館みたいな感じ)。タイムスリップしたような気分で楽しいところでした。是非行ってみてくださいっ。
( しん)