備中松山城の雲海

マチュピチュのような遺跡風景なら竹田城が有名だが、こちらは現存する天守を有する天空の城で日本三大山城、岡山県高梁市にある「備中松山城」だ。朝霧に包まれた備中松山城は、戦国というイメージにぴったりな幻想的な風景を醸し出すので、一度は訪れておこう。

備中松山城の雲海を楽しむには

雲海(朝霧)に包まれた備中松山城は、いつ行っても見られるという訳ではない。備中松山城を訪れる際は、朝霧という自然現象を知り、雲海が発生する条件をしっかりおさえてから行くことが大切だ。竹田城の雲海ページでその発生条件を詳しく解説しているのでチェックされたし。

雲海展望台と撮影場所をチェック!

雲海は、備中松山城から直線距離でおよそ1.1kmの雲海展望台から見る。朝霧より高い位置から望むことから、展望台まで相当歩くのかと思いきや、実はほぼドア・ツー・ドア。まずはその場所からチェックしていこう。マップ上のカメラマークが、雲海を撮影できるスポット。ここに木で組まれた展望台がある。詳しくはマップ下のリンク「より大きな地図」で確認を。カメラマーク付近には、細い道路が見られるが国道484号からその道をゆく。片側一車線のアスファルトの道だ。現地調査とGPS測量で寸分狂わずマークしているので、カーナビに道のかたちを参考に場所を入力するも良し、スマートフォンをお持ちの方ならこの Googleマップ を現地で見ながら GPS 頼りに訪れると確実だ。なお、道の終点まで行くと行き過ぎ、ちょい手前の登山口(後述)を目指そう。

(ドコモ・au は問題ないがソフトバンクは未確認。電波が届かない携帯でもGPSは別で受信しているので、地図さえ電波のあるところで読みこんで置けば使えることが多い)


より大きな地図で「備中松山城の雲海スポット」を表示

これまで現地までの道のりと展望台は案内板が無かったが、2013年になって案内板が設置されたので、ほぼ迷うことは無いだろう(Googleマップにもそのポイントが明記されるようになった)。なお、備中松山城から臥牛山に入り、吊り橋を渡るとこの道の終端に徒歩で出ることもできるが、ちょっと時間がかかるのでマップの車道から自動車で、またはタクシー(後述)で行くことをおすすめする。

展望台から備中松山城天守までの直線距離はおよそ1.1km。天守や二重櫓が肉眼で確認できる距離で、写真撮影なら35mm換算で、200〜300mm の望遠レンズがあれば良い。

目指すべき風景は、雲海展望台への登山口

  • 道路終点間際に左手に現れる下の写真の風景を目指そう。夜明け前でも車のヘッドライドで充分確認ができるぞ。
  • この登山道を登り徒歩1分で展望台に着く。道はシンプルで迷うことはないだろう。看板には「備中松山城展望台」と書かれていて、もう1枚には「野ザルに注意」と書かれている。となると展望台でお菓子を拡げてなんてのもやめた方が良い。筆者は一度、この道路上で十数頭の猿に出くわしたことがある。
  • この付近は展望台も含め、街灯が全くない。夜中だとまばゆい満天の星空が見られるほどだ。登山口までは車のヘッドライトだけが頼り。展望台までは徒歩1分といえど夜明け前だと懐中電灯があれば安心だろう。

備中松山城の雲海展望台への入口

登山口向かいの駐車スペース(つまり先の登山口写真の向かいにある)。このスペースに約3台が駐車できる。この道は行き止まりとなっているからこのスペースに駐められなくても迷惑にならないところに路駐すると良い。写真左手の構造物は仮設トイレ(男女別)。
備中松山城の雲海展望台前の駐車場

目指すはこの展望台。ここで備中松山城の雲海が見られる。
備中松山城の雲海展望台

雲海撮影のコツ

まずは展望台からの風景。大量に雲海が出ていればどこに備中松山城があるのか分からない。つまり、雲海の下に城山が沈んでいる。ざっくり言うと展望台から右手の方なのだが、遠くの山影でおおよその位置を把握しておこう。赤いマーク部分に城山が隠れている。写真(下)は夜明け前。

2013年9月、地元自治体により、展望台眼前の杉の木を20本以上伐採され、眺望が良くなっている。展望台に登らずとも、その下からもよく見えるようになった。写真下の木々と城との間隔を拡げようと思えば、なるべく高い位置から撮影すると良いぞ。また、木で造られた展望台の足もとは冬はツルツルに凍っていることがあるため、充分に注意が必要だ。当然ながら三脚も滑るから、柵や床板のねじ穴などに、ひっかけるかたちでうまく固定しよう。

雲海に隠れた備中松山城

2016年10月20日、地元自治体により、最も高所の従来の展望台(高さ3.6m、幅4m、奥行き2m)の前に、新たに展望デッキ(幅7.8m、奥行き2.8m)が増設された。これまで三脚使用でほんの数人しか撮影できなかったスペースが大幅に拡大。写真は増設された展望デッキ。その昔は約3人のスペースで、脚立を持ち込むか、立ち呑み屋のように肩を斜めに列んで撮影していたが、これからはそういった苦労は無くなるだろう。
備中松山城の雲海展望台

雲海から備中松山城が出るタイミングと、朝日が指すタイミングが合致すれば、一番美しいかも。

雲海の動き

夜明け前から見てみよう。雲海が大量発生していれば、先の写真のように城山は沈んでいることが多い。また、雲海は上下するので城山が顔を出したり沈んだりと、その風景を刻々と変える。下の写真は雲海が少し引き天守が顔を出したところ。

雲海の動き

この日は、日の出前の雲海の動きが激しく、10分もしないうちに城山がすさまじい勢いで雲海に飲み込まれた。こういった動きを何回か繰り返して日の出を迎える。
雲海の動き

レンズは何ミリが良いか

雲海ボリュームによって、どう切り取るかが大きく変わるが、おおよそ200mm前後あれば良いかも。朝日が指すタイミングと雲海から城山が出るタイミングが合えば、城がくっきり浮かび上がる風景に出会うことができるぞ。タイミングが合うかどうかは運でしかないが、晴れ予報が出ているときを選ぶ方が良いだろう。この日は、朝日が差した直後に、城山が雲海の下に隠れまた1時間待つことになった。

レンズ焦点距離240mm

備中松山城の雲海備中松山城の雲海

レンズ焦点距離190mm

備中松山城の雲海

レンズ焦点距離330mm

天守付近をアップにするには300〜400mmが必要となる。
備中松山城の雲海を望遠レンズで

反射板をチェック

日の出後、おおよそ1〜2時間で雲海は消えゆくわけだが、現地でお会いした幾人かのカメラマンは、写真赤マークの反射板が見えてしまうと撮影をやめることが多い。たしかに反射板が見える頃には雲海の量も乏しく、天守の上にあってちょっと邪魔ということなのかもしれない(反射板は、無線の電波を反射させる中継装置)。
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雲海条件をチェックしておこう

雲海が出る時期

雲海が出る時期は、竹田城と同様に9月下旬〜4月上旬の早朝。12月中旬から2月末までは雪が積もることがある。時間は明け方から午前8時頃まで。

雲海が出る条件

11月上旬〜12月上旬が濃い朝霧が期待できる良い時期。雲海が出る条件は「前日の日中と当日朝方との寒暖差が大きいこと」がひとつの判断基準となる。
現地で朝3時〜4時頃に霧が発生していれば、雲海が出ていると考えて良いだろう。これが備中高梁駅のある麓では、霧は感じられず夜空を見て山裾が見えなくなったり、さっきまで見えていた月が見えなくなったりとなれば、朝霧が発生し始めたと考えて良い。

いつ狙うべきか、雲海予報は?

雲海予報について詳しくは、竹田城のページで解説しているので、こちらをご参照を。

いつ雲海が出たのか知りたいときは

2016年度から、シーズンになると地元自治体「高梁市」の方々が、撮影を行ってWeb公開しているからこちらもチェックしておこう。

夜明け前から行くなら要チェック

懐中電灯

なにせ、備中松山城の雲海撮影スポットは、ドア to ドア。かっこ良くヘッドライトを付けても良いが、いわゆる懐中電灯をひとつ。もし忘れたら備中高梁駅西側のコンビニでGETしよう。もちろん日の出後に行くなら必要なし。

防寒対策

備中松山城の雲海展望台は、車道から徒歩1分なので、三脚を展望台にセットしておいて、あとは明け方まで車で暖をとるという人が多い。日が昇ってしまうと、いつ良い状態に雲海がかかるか分からないので、展望台でじっと待つといったパターン。

寒さを防ぐには、袖口や首などから体に冷たい外気を入れないこと。通気性の素材で作られた服もおすすめできない。つまり、首回りや胴回り、手首をしっかり隙間を無くし、服の内側の空気をあたためる工夫をしておくと良い。10月は最適気温は9度前後だが、11月の中下旬は最低気温2〜5度になるので、じっと同じ場所に立って待つこの寒さが半端ない。苦手な人はカイロを持っていくと良いぞ。展望台に上がってしまえば、竹田城と違って地面足下からはさほど冷えない。

日の出何時間前に行けば良いか

雲海シーズン休日の夜明け前は、カメラマンが多い。休日で大量の雲海が予想される日は、夜明け3時間前には撮影場所が無くなることが多い。今後、この時間は年々早まっていくだろう。んが、日が出てからでも良いという人は、特に急ぐことはなく、日の出後〜1時間が目安だろう。大量発生した日は日の出後2時間は雲海が出ていることも。

(日の出時間:10月〜11月の日の出は、おおよそ6時〜6時30分)

なお、日の出の太陽そのものの撮影は、東側が木々に隠れているためこのスポットからはできない。展望台からは南側のみの眺望となる。

電車アクセスの場合

電車アクセスの場合は、備中高梁駅付近のホテル「高梁国際ホテル」などに泊まり、タクシー利用が良い(備中高梁駅から現地まで約10分)。運行は朝5時以降。タクシーは要予約(朝は台数が少ないため)。「備中松山城の雲海が見たい」と言えば、対応してくれる。

なお、夜明け前の風景は興味がなく、写真こだわり派でもない場合は、朝6時とか7時とかのタクシー利用で日の出から1〜2時間ほど出ている雲海を楽しめる。時期により異なるのでタクシー会社に相談するのも良いかも。

備北タクシー株式会社 TEL:0866-22-2086
平和タクシー株式会社 TEL:0866-22-3177

展望スポットそのほか

松山城を望む見晴らし台

松山城を望む見晴らし台の望遠鏡備中松山城の西に、城を遠望できる場所がある。天守まで直線距離で約3.8km。県道302号線の道路脇に、望遠鏡(無料)が設置されている。備中松山城は、城下から見えないように意図的に木々が植えられている城なので、城下からも方角によっては天守が見えない。この西側もそうで、絵的にはちょっと苦しいかもしれない(詳しい場所はGoogleマップ参照)。

松山城を望む見晴らし台からの眺望

(文・写真:岡 泰行)

天空の城そのほか

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