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雪の彦根城

雪の城の撮影

季節を問わず、姫路城をはじめとする白漆喰(白いお城)の城は、白と青空のコントラストが好きで、歴史風情漂う古風な写真より、南国トロピカルな眩しい青と白でメリハリの利いた写真の方が、何故かぐっとテンションが上がる。青空も、本来、カメラマンは多少の雲が出ている時を好んで撮影することが多い。アングル上、その雲を利用して撮ると変化がある写真が撮れるのだが、困ったことに城の撮影に行く日は、叶うなら一点の雲もない快晴を狙っている。要するに城は、際立つ白がいい。

南国トロピカルを連想させるほどの濃い青を撮ろうと思うと、悩みは天気予報だ。「晴れ」と予報が出ていても、現地に着くと、薄曇りだったり、濃いはずの青がPM2.5でうっすら白かったりと、足を運んでみないとどんな青空なのか分からないことだ。ある日、ウェザーニュースに問い合わせてみると、薄曇りと晴れの違いを明確に予報することは難しいらしい。

大阪は積もるほどの雪がなかなか降らない土地だ。雪と城の写真を撮りたければ、北に足を運べばよいのだが、寒いことを理由にデスクワークで籠もってしまったり、ここ最近は雲海の城を再撮したりと(雲海撮影の方が寒いのだが)、なかなか重い腰が上がらない。

ふとテレビを観ていると彦根城に雪が積もったというニュースが関西ローカルで流れていた。滋賀県は安土以東でよく積雪がある。天気予報をチェックすると翌日は「快晴」。うまくいけば、白と青のコントラストの利いた雪の城の写真が撮影できるかもしれない。たまにはと、彦根城に向かった。

有料ゲートをくぐり、廊下橋に至る登城路を登ろうとしたが、日陰なこともあってか、ほぼアイスバーン(雪面が凍結して氷のような状態)。観光客は、さすがに氷の階段は登れず引き返していた。アイゼンがあれば良いが、城の石を傷つけてしまいそうなので、こういった時はむしろ天然ゴムソールのシューズがあればと頭をよぎったものの、もちろんそこまで準備していない。なんとかなるだろうと思うのが悪い癖、何度か石垣に抱きつきそうになったが、なんとか登りきると、本丸には、登山姿のカメラマンが3人しかいない。もちろん天守内も閑古鳥。管理事務所の人が、登城路の氷を割ろうと必死で作業を試みていたが、登城路も歴史的な価値がある。当時の道なので重機が使えず体力勝負、いっこうに進まない。こりゃ大変かも。話を聞いてみると彦根城は年に3回はこうなるそうだ。

玄宮園から望む雪の彦根城天守

雪が積もるとたとえ逆光でも、レフ板(反射板)を当てたように白漆喰が明るく見える。下層の屋根や地面に積もった雪で光を反射するからだ。玄宮園から彦根城天守を望むと、大抵は天守が暗く沈みがちになるのだが、随分と明るく見えた。
雪の彦根城

  • アイスバーンの登城路

    アイスバーンの登城路
  • 登城路脇の新雪をゆく

    雪の登城路をゆく

彦根城天秤櫓
雪の彦根城

雪の長浜城

一通り撮影した後、長浜城に移動した。2016年2月末まで、天守内装工事のため休館しているせいか、おおかた誰もいない、つまり、新雪に足跡がない。ひとり、カメラを持った若い人がいて、入れ違いに公園に入ると、絵的に邪魔にならないよう、随所で迂回した足跡をつけていた。むむ、これはアングルを知っている!そして帰り道も新雪を踏んでいない。ちょっとしたことだが、心の中で感謝した。自分もそうしよう、でも迂回するのはかなり大変(汗)。こちらも雪がレフ板の役目を果たし、逆光の撮影ポイントでも天守が明るく見える。

雪の長浜城

(文・写真=岡 泰行)

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