大阪城10景
撮影スポットも豊富な大阪城は、姫路城並みに角度を変えてさまざまな表情を楽しめる城だ。その中でも一押しは「西の丸庭園」からの眺めだろう。本ページでは、城ファンとして見逃せない、主に天守を望む造形美に優れた撮影場所10選とそのポイントを紹介する。このほかにも美しい眺めを得られる場所は多く、ぜひ城内を歩いて探してみてほしい。
筆者が駆け出しの頃、大阪城でひとりカメラを手に歩いていると、遠くから「そこちゃうで!こっちからや〜!」と年配の写真愛好家に声をかけてもらったことがよくあった。大阪という土地には、人の距離感が近く、こうしたやりとりが自然に生まれる面白さがある。
アングルを探す方法は、基本的にはじっくり歩くことだ。不思議なもので、それが伝わるのか声をかけられることが多かった。今ではネットで数多くの構図を知ることができるが、かつてはこうして写真家同士の交流によってアングルが継承されていた。雁木上からの眺めなど、初めて訪れた者には気づきにくいが、先人たちが開拓した撮影風景も多い。先日も海外から訪れた写真好きらしいカップルにビューポイントを教えたところ、長くその場に佇んで天守を眺めていた。旅のひとときが少し豊かになる瞬間だ。これからも、こうした撮影ポイントを伝えていきたい。
写真は、いずれも『お城めぐりFAN LIBRARY』の大坂城ページで公開している。詳しい場所はGoogleマップのカメラマークをチェックされたし。
また、『大坂城豊臣石垣公開プロジェクト(大阪市)』にて、いくつかの撮影スポットとそのコツも紹介しているので、合わせてご参照を。
(城郭カメラマン 岡 泰行)
本丸内堀の北西から
水堀越しに本丸石垣と天守が美しく映えるスポット。屏風折れの石垣、水面にその姿を写す大阪城天守閣だ。大坂城の代表アングルと言って良い。右手に見えているのは隠し曲輪の石垣となる。夕方早めの撮影が、大阪城天守閣と石垣、両方に日が当たり立体感が増す。日暮れ間際だと石垣が影となり暗く写ってしまう。
玉造口の雁木上から
午前中なら順光で大阪城天守閣が輝く。日没になればライトアップが最も美しく見られるスポットだ。晩秋には、夕焼けに染まる大阪城天守閣に出会えるかもしれない。玉造口を入ってすぐ左側の石段(雁木)を上まで登ると、美しい風景が待っている。
西の丸庭園から
真西から捉える大阪城天守閣。正面から捉えると建築美が際立つ。特に天守が西日に映える午後が美しい。「西の丸庭園」は有料公園。閉園時間をチェックしてから訪れよう。また、イベントが開催されていない時の方が、人が少なく多彩なアングルを撮影することができる。
西の丸北側の仕切りの石垣上から
「西の丸庭園」に入り最も北側までゆくと、仕切りの石垣がある。その雁木を登れば絶景が待っている。眼前の本丸水堀に隠し曲輪の石垣と本丸石垣が高々とそびえ、その中心に天守がそびえる。西側から望むため撮影時間は午後が良い。
西の丸から本丸空堀と石垣を添えて
西の丸から天守を望むアングルのひとつ。本丸空堀越しに天守を捉えると、累々とした石垣や扇の勾配との相性がいい。背後にビルが見えるが木々に葉がつく季節であれば、さほど目立たない。また、石垣のツタが紅葉する時期に行けば、より色彩豊かな写真が撮れる。西側から望むため撮影時間は午後が良い。
蛸石と天守に桜門を添えて
本丸の正面玄関とも言うべき桜門。大阪城内第一位の大きさを誇る巨石「蛸石」の上に天守が見られ、桜門が額縁となるアングル。大阪城が、インバウンドで登城者が増えてからは、この場所から人がいない写真を撮るのは困難だが、朝夕の時間帯だと狙うことができる(写真は午前7時)。桜門内の天守を、できるだけ隙間無く収めるのがポイントだ。近年、本丸の木々が伐採され、さらに天守が見えやすくなっている。
余談ながら、大阪城の枡形虎口には、ひときわ目を引く巨石が多く据えられている。屈強さを誇示し、権威を登城者に示すためと理解できるが、これは幕府の命令によるものではない。天下普請を担った諸大名が、あえて採算を度外視し、戦のかわりに普請で忠誠を示した表れといえる。他藩の普請場を見ては、自らの担当箇所でもさらに大きな石をと競い合った。その結果、今に残る壮大な石垣が、力と威信を刻み込むように屹立している。詳しくは「蛸石と大阪城内の巨石ランキング」で紹介している。
極楽橋と天守をセットで
極楽橋はいまやコンクリート造の橋だが、その名は豊臣時代から続いている。往時にもここに橋が架けられており、名残を感じさせる存在だ。歴史に思いを馳せるなら、この橋を撮影の舞台に選びたい。位置は本丸北側にあたり、水堀が映える早朝がもっとも撮影に好ましい時刻だ。
琵琶湖に浮かぶ竹生島の宝厳寺には、ひときわ格式ある唐門がある。伝承によれば、これは淀殿が極楽橋の唐門を寄進したものとされる。豊臣家の栄華を背景に、城の一部が湖の祈りの地へと移された逸話は、時を越えて人々の歴史ロマンをかき立てる。詳しくは「竹生島に残る豊臣大坂城・極楽橋の唐門」で紹介している。
大手土橋から千貫櫓
大阪城の千貫櫓は、その歴史を語る上で外せない存在だ。西外堀からそびえ立つ千貫櫓を、大手土橋上から威厳とともに、しっかり撮影しておきたい。千貫櫓は現存櫓で国の重要文化財。千貫櫓について詳しくはこちらで紹介している。
壮大な南外堀を捉える
大手口から登城する際に、目に飛び込んでくる風景がこの南外堀だ。誰もがあまりの壮大さに目を奪われる。大阪城ならではの風景と言っていい。大阪城の弱点である南側に、ひきわ大きく造られた壮大な堀と、現存する六番櫓(国の重要文化財)を、できれば鏡面反射を生む風の無い穏やかな日に撮影したい。南外堀について詳しくはこちらで紹介している。
乾櫓をシンメトリで
乾櫓はL字型の櫓で城外側にその意匠が見られる。つまりは西外堀越しに撮影すると、その姿を的確に捉えることができる。風の無い日に、西日を浴びる乾櫓を広角レンズで捉えたい。乾櫓は現存櫓で国の重要文化財。乾櫓について詳しくはこちらで紹介している。
高層ビルから望む大阪城5景
大阪歴史博物館から
大阪歴史博物館は、最上階とその階段スペースがガラス張りになっており、千貫櫓や大手門、六番櫓や大阪城天守閣を南西から望むことができる。晴れた日はガラスへの映り込みが激しく、窓ガラスは二重になっているため、いわゆる反射を防ぐ撮影グッズは、ほとんど機能しない。全景を綺麗に撮影するには、午後の順光となる時間帯で、窓ガラスの中で影になっているところを探し、そこから撮影すると良い。
大阪歴史博物館では、特別展の開催期間中に限り、金曜夜のみ20時まで開館することが、まれにある(すべての特別展が夜まででとは限らない)。博物館上階から町の夜景とともに、ライトアップされた大阪城を望むことができる。幻想的な光景は昼間とは趣を異にし、訪れる価値があるだろう。詳しくは「大阪城のライトアップ美しさの秘密に迫る」で紹介している。
國民會館武藤記念ホールから
大阪城の北西に位置する「國民會館住友生命ビル」から望む。手前に乾櫓、広角レンズがあれば大手門も視野に入れることができる。普段は解放されておらず、國民會館武藤記念ホールで、セミナー等が開かれたときに参加するしかない。
KKRホテル大阪から
一番櫓、六番櫓ほか、大阪城天守閣を南側正面から捉える撮影スポット。主な見られる場所は5階テラスから。また、ホテルに泊まり客室から、12階の天空レストランからも眺望が良い。この眺望について詳しくは「KKRホテル大阪から大阪城を望む」で紹介している。
ダブルツリーbyヒルトン大阪城から
大阪城の北西に2024年春にオープンした「ダブルツリーbyヒルトン大阪城」。その6階に位置する「ラウンジ&バー SEN(舟)」からの眺望。多少、電線が写り込む可能性はあるが、外堀越しに二の丸と本丸の石垣が連なる姿が印象的だ。
クリスタルタワーからの眺望
大阪ビジネスパークにそびえるクリスタルタワー21階「クリスタルカフェテリア」からは、北側から特別史跡大阪城の全域を見おろすことができる。平日のみ営業しており、社員食堂のような価格帯で気軽にランチを楽しめる。今回は大阪市のご厚意により、より正面にあたるレストラン内のレディースエリアから特別に撮影を行った。右手には伏見櫓跡や京橋口土橋、左手には東外堀を含む城郭の姿が望める。この時の撮影した写真は、2024年12月、大阪市の『特別史跡大坂城跡整備基本計画』の表紙に掲載いただいている。
(文・写真=岡 泰行/プロフィール)