大阪城の夕景・ライトアップ

大阪城のライトアップとは

大阪城のライトアップは、大阪城天守閣の平成の大改修を終えた平成9年(1997)から始まった。大阪城天守閣を中心に本丸石垣や大手門、千貫櫓乾櫓などがライトアップされている。その美しさから、大阪城は2014年に日本三大夜城に認定されている(ほか高知城高田城)。余談ながら、城で最初のライトアップは、信長の安土城といわれ、天正9年(1581)のお盆の日に行われたそうだ。光源は提灯と松明できっとオレンジ色に輝いていたに違いない。

フルカラーLED照明導入

2023年4月より、大阪城天守閣ライトアップはLED照明が導入された。平成9年から始まったオリジナルデザインのライトアップを、ライトアップデザイナー石井幹子氏監修のもと、新たなフルカラーLED照明を用い再現した。テーマは「大阪城天守閣の歴史と特徴の強調」や「時間とともに変化する演出性のある光」。LEDの導入により色彩豊かな表現が可能となったほか、年間消費電力量を約85.1パーセント削減、二酸化炭素排出量を約41.5トン削減することとなった。

ライトアップは何時から?

ライトアップの開始時間は、大阪城の経度・緯度から算出された日没時間に合わせて日々の開始時間が変動するかたちでプログラミングされている。時間をかけて変化する大阪城のライトアップの光景が、他の城のライトアップと異なる美しさがあるのは、デザインとこういった細かな演出がなされているためだ。消灯は24時より順次消灯し24時30分には全消灯する。

ライトアップ観賞のポイント

大阪城天守閣のライトアップは段階的に灯される。それはこういった仕掛けだ。まずおおよそ日没時間に石垣への照明が点灯し、次に日没10分後に天守最上階の入母屋最上部と各階の窓に灯りがともる。天守上部の伏虎(ふしこ)と入母屋破風上部にスポットライトがあたるかたちだ。また、天守の窓に明かりが灯る(上写真)。この状態が結構な人気があるのだが、それは窓から漏れる黄色い明かりが、人の暖かみを演出していることにある。まるで、日暮れに家路につくような、そういった住まいの暖かさを思い起こさせるからだ。また、この窓の灯りは大阪城天守閣内の明かりが漏れているのではなく、窓の内側をこうしたことを意図してライトアップしている。日没約20分後には外壁を白く照らす照明が灯され、約50分をかけて天守の壁面すべてを照らしフル点灯してゆき、やがて白く輝く大阪城となる(下写真)。ライトアップが変わりゆく景色をじっくり眺めてみるとその演出が実に面白い。

LED化による変化

一般的にはライトアップの光源がLEDに変わることで白さに締まりが無くなり、絵的にぼやけてしまう印象があるが、今回のライトアップの演出を実際に見ると、そういった変化はあまり感じない。従来のライトアップを、やさしい光で包むかのように見事に再現していた。大阪市によると、監修の結果、オリジナルデザインを高度なレベルで実現すべく取り組みがなされたとのこと。また、既存のライトアップの基礎や架台を再利用し景観を変更せずLEDライトを設置、台数は従来の54台からLED64台に増設したそうだ。鯱をはじめ、見る角度によって大阪城天守閣のエッジが以前と異なり際立って見られるようになった。LEDによる多少のにじみ感をエッジを際立たせることで、よりシャープに転じているところが絵的にいい。

照明デザイナー

大阪城のライトアップデザインは、ライトアップの第一人者といわれ、東京タワーや横浜ベイブリッジ、明石海峡大橋などのライトアップを手がけた、石井幹子さんによるものだ。紫綬褒章受賞、文化功労者顕彰され世界各国で活躍されている。日本の城では、大阪城姫路城、信州上田城の夜桜、福山城のライトアップをてがけている。

ライトアップの色

ライトアップは通常「白」を基調としているが、まれに「ブルー」や「ピンク」にライトアップされることがある。医療従事者に感謝の気持ちを表すブルーライトアップ、10月は乳がんの正しい知識を広める啓発運動「大阪ピンクリボンキャンペーン」のピンクライトアップ、11月中旬の世界糖尿病デーのブルーライトアップなどがそれだ。これまではタングステン灯に、ブルーのセロハンを貼り付けて色変更を行っていたが、今後は、フルカラーLED照明なのでそういった作業は必要なくなり、色の変更が可能となった。大阪市によると、2023年4月以降は、カラーライトアップの日も22~24時は白色ライトアップに戻し、お城本来のライトアップが見られるようになった。これらカラーライトアップの点灯時期については、大阪城天守閣サイトで告知されているのでチェックしておくと良い。

ライトアップの景観

西の丸庭園、春の夜間公開

西の丸庭園には、ソメイヨシノを中心に約300本の桜がある。通常17時までの開園時間を21時まで延長する「観桜ナイター」が3月下旬 〜4月中旬に行われており、夜桜が愉しめる。この西の丸庭園からは、威風堂々とした大阪城天守閣が見られる。是非一度、訪れてみてほしい。余談ながら西の丸庭園には大阪市の開花を知らせる桜の標本木がある。
大阪城観桜ナイター

大阪城内から

筆者のイチ推しは、玉造口から望む大阪城天守閣だ。詳しくは、大坂城豊臣石垣公開プロジェクトの石垣コラムでライトアップの撮影スポットを解説しているので、参照されたし。

大阪城内では他に、本丸石垣や大手門千貫櫓など、随所でライトアップされており、その風情が愉しめる。

大阪城のライトアップ、最終段階
玉造口雁木上から見るライトアップ

大阪城本丸石垣のライトアップ
本丸石垣のライトアップ

桜門から観る大阪城のライトアップ
桜門から観るライトアップ

大阪城大手門のライトアップ
大手門のライトアップ

大阪歴史博物館から

大阪歴史博物館から大阪城のライトアップを捉えるには、特別展の期間中の金曜夜に訪れると良い。午後8時まで開館しておりライトアップが観られる。OBPのビル群が、まるで屏風のように大阪城天守閣の借景となり、視界すべてが光輝く風景となる。なお、博物館内は三脚禁止なので、手ぶれ補正の効くカメラを用いるか、ISO感度を上げ、窓ガラスや柱などに手でうまくカメラを固定して撮ると良い。また窓に光の反射ができるだけ無いところを探してカメラを構えると綺麗に撮ることができる。夜間に入館できる特別展の情報は、大阪歴史博物館のWebサイトでご確認を。

大阪歴史博物館から観る大阪城のライトアップ

ライトアップ撮影方法

ライトアップを綺麗に写真に撮りたい人は、以下の記事に撮影のポイントをまとめたので合わせてご参照を。

(文・写真=岡 泰行 取材協力:大阪市)

電球時代のライトアップ装置(備忘禄)

備忘禄にと、電球時代のライトアップ装置の写真を遺しておく。ライトアップ装置は、本丸西側の雁木上の南北(一部立入禁止)や大阪城天守閣の東にある配水池上(立入禁止)に設置されている。先の色変更は、昔ながらの電球によるライトアップのため、昨今のLEDによるライトアップと異なり簡単に変更はできず、色変更の際は大阪市の方々の手によってライト装置の前面にカラーフィルムを貼るかたちで行われていた。このため色は多少シックな色合いとなっていた。

  • 大阪城のライトアップ装置
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