写真:岡 泰行

小谷城の歴史と見どころ

小谷城は、浅井氏三代の城で信長の妹、お市が嫁いだ城で知られている。初代亮政が大永2年(1522)に築いたのがはじまりと云われ、小谷山から南に伸びる尾根を城郭化している中世の山城だ。山腹や谷筋には屋敷跡が残るが、山城が詰めの城という意味あいではなく、居住区でもあり家臣の屋敷なども多くはその山城にあった。本城である小谷城、清水谷(きよみずだに)、山頂の大嶽(おおづく)、清水谷の北側に伸びる尾根に築かれた福寿丸や山崎丸などの砦を含めるとその城域は広かった。

小谷城黒金門跡
大広間跡に通じる黒金門跡

小谷城本丸跡
小谷城本丸跡

浅井氏は亮政の孫、長政の代になって、いよいよ勢力を伸ばす。長政は初め、近江国南部を治める観音寺城の六角義賢の「賢」の字をもらい賢政と名乗っていたが、六角氏とその関係を絶って永禄4年(1561)、名を長政と改め、その後、信長の妹、お市を娶る。これにより織田勢と連合し、永禄11年(1568)、六角氏の観音寺城を攻め、近江半国を手に入れることになる。しかしその後、信長の越前朝倉攻めが決まり、浅井氏は古くから手を結ぶ朝倉氏と共に信長に反旗を翻すことになる。永禄13年(1570)、小谷城の南、5.5kmにある姉川にて織田徳川連合軍と戦うが、浅井軍は大敗を喫し、天正元年(1573)に小谷城は陥落、浅井久政、長政親子は自刃する。この小谷城攻めで活躍したのが秀吉である。長政の守る本丸と長政の父、久政の守る小丸の間の京極丸を落とし、久政を自害に追い込んだらしい。その後、2日間をかけて本丸を攻撃、長政はついに自刃し、その子、万福丸も後に捉えられ、関ヶ原で磔にされた。小谷城落城後、この地に入封したのが秀吉で、山城では不便なところもあり、近くの長浜(今浜)に長浜城を築城、ここに小谷城も廃城となった。城下の実宰院には、浅井長政の姉である昌安見久尼(しょうあんけんきゅうに)が、小谷城落城の際、浅井三姉妹を実宰院でかくまったという言い伝えが残る。

琵琶湖に浮かぶ浅井家ゆかりの竹生島
琵琶湖に浮かぶ浅井家ゆかりの竹生島

浅井久政奉納・弁財天・竹生島
竹生島の弁財天。

この地は、信長にとっても近隣諸国にとっても京に近く重要な土地で、いずれどこかに吸収される運命であったとも云われている。現在、城跡は整備され、多数の曲輪が残り、遺構を明瞭な状態で見ることができ、小谷城がどんな姿をしていたのかがよく解る。黒金門跡付近に浅井家供養塔、赤尾屋敷跡に長政自刀の地の碑が建っており、本丸ではかつての栄華を偲ぶかのように毎年春に桜が咲き誇る。

現地案内板が充実

小谷城は、城跡の要所に現地看板が充実しており、目に見える風景を中心に理解を深めることができる。

資料館で縄張図をGET

小谷城縄張図清水谷(きよみずだに)にある「小谷城戦国歴史資料館」にどうぞ。A3サイズの縄張図で、コンパクトに折り畳まれたA6ポケットサイズで配布されている。これは実に優れもので、等高線上に縄張りが描かれており、各曲輪の名称も併記されている。また、大嶽城や月所丸、福寿丸、山崎丸など小谷城の全体が描かれている。裏面は各所の解説がぎっしり。

小谷城の散策コース

本城と清水谷は見ておきたい

小谷城(おだにじょう)は大きく4つのエリアに分かれている。小谷山から南に伸びる尾根に築かれた本城と呼ばれるエリア、その西側の清水谷(きよみずだに)、山頂の大嶽(おおづく)、別方向の尾根に伸びる福寿丸や山崎丸などだ。すべてを踏破するととんでもなく時間がかかるので、初めて訪れた時は本城の尾根を登り(余裕があれば大嶽を見て引き返し)、清水谷を降りてくるのが無難で見どころが多くあって良いだろう。

大嶽(おおづく)は小谷山の頂上で多少の土塁が見られる。また、大嶽に至る登山道で、小谷城を見下ろせる場所もあるぞ。ふと、城の部位を表すネーミングで、「大嶽」というのが、どうにも聞き慣れないが「嶽」は、岳と同じ意味あいで高い嶺を指す。その姿を形容するネーミングだと思われるが、単に何かの当字だったりして。

小谷城は、山頂まで徒歩ならいつでも入山可能。といって、山なので侮るなかれ。ハイキング装備は必要。

小谷城の撮影方法

兵どもが夢の跡小谷城といえばイメージするのは、落城というストーリー。浅井長政、浅井三姉妹を思って訪れた人も少なくないだろう。落城時はどんなものだったか、今は知るよしも無いが、「兵どもが夢の跡」と言っていい、うってつけの風景がある。山王丸に入る虎口だ。崩落した石垣とその虎口風景は、筆者が写真を撮り始めた25年前に、当時、私より年上の古豪の写真家が発表していた風景だ。ぜひ、撮影に挑んでほしい。

土佐屋敷石垣・清水谷また、小谷城内で絵になりやすい見どころは、黒金門跡、本丸石垣、大堀切、山王丸の大石垣、清水谷の土佐屋敷の石垣あたり。小谷城の全景なら、北陸自動車道下の農道からの撮影が良い。細い道だが車で入ることができる。小谷城と清水谷、そして大嶽と、そのかたちがよく分かるスポット。

小谷城の写真集

城郭カメラマン撮影の写真で探る小谷城の魅力と見どころ「お城めぐりFAN LIBRARY」はこちらから。

小谷城の関連史跡

姉川の古戦場少し足を伸ばせば「姉川の古戦場」。有名城では長浜城。セットでどうぞ。そのほか「北国脇往還 伊部宿」、「国友鉄砲の里資料館」、「石田三成公出生屋敷跡」など、おすすめしたい観光の見どころが実に多い地域。

 

浅井家侍女の墓浅井氏関連では、徳勝寺の「浅井家三代の墓」、小谷城の東側の集落に残る「浅井家侍女の墓」。また、南へ約1kmの「実宰院」。実宰院は、浅井長政の姉である昌安見久尼(しょうあんけんきゅうに)が、小谷城落城の際、浅井三姉妹を実宰院でかくまったという言い伝えが残る。本堂の裏には昌安見久尼の墓も。

 

竹生島そして忘れてはならないのが、琵琶湖に浮かぶ「竹生島(ちくぶしま)」。浅井久政永禄8年奉納の弁財天、淀の方が移築したと伝わる大坂城極楽橋(その後、豊国廟極楽門)として使われていた宝厳寺観音堂唐門、伏見城日暮御殿の移築と伝わる都久夫須麻神社本殿、秀吉の御座船日本丸で船櫓として利用された船廊下などがある。「竹生島」へは、長浜城のすぐ南にある長浜港から船で。なお、琵琶湖汽船は事前予約が必要だ。

小谷城のおすすめ旅グルメ

その昔、小谷城の近所に中華屋があり、下山後に餃子を食べた記憶があるが、その店がいつのまにか無くなってしまい、この近辺の食事処が皆無となってしまった。長浜城とセットでということで、長浜界隈でどうぞ。

小谷城の史跡めぐりにこだわる最適なホテル

おすすめの観光スポットが、あまりに多い地域。宿泊処が多い長浜を、ベースキャンプにどうぞ。

小谷城のアクセス・所在地

所在地

住所:滋賀県長浜市湖北町伊部 [MAP] 県別一覧[滋賀県]

電話:072-296-8435(小谷城郷土館)

アクセス

鉄道利用

JR北陸線河毛駅下車、バス「小谷城址口」降車、山頂まで徒歩なら約30分。麓から山頂までのシャトルバスが出ている場合もある。河毛駅から徒歩なら約30分。駅にコインロッカーがあるが午後6時に閉まるので注意。また、北陸本線は本数が少ないので、帰りの時間を確認した上で城址までの所用時間を計っておくのが大切。

マイカー利用

北陸自動車道長浜インターチェンジを左に出て365号線を北上30分。ふもとに駐車場あり。また、車で中腹の大手門跡あたりまでは登れます。
小谷城のすぐ近くにETC車のみが利用できる「小谷城スマートIC」は2017年3月25日以降、利用可能。

城ファンの気になるところ (15)

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    浅井長政自刃の地は、木が上から覆いかぶさっていて、昼でも薄暗く、非常に不気味です。ああ、それから、麓に須賀谷温泉ってーのがありました(地元出身の友人が言うには鉄分が多いらしい。私は入っていません)。

    ( りょうさん)

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    城跡は、多少の石垣を残しつつ城全体の形がよくわかる、実に城跡らしい城跡。どこに立っても浅井長政気分が味わえます。ただし、城内はまったく未整備ですので、足元不安定。照明もまったくありません。私は山頂で暗くなってしまい、下山するのに道に迷いそうになりました。

    ( よーすけ)

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    とにかく土塁(石垣が崩れたものか?)と削平地のオンパレード。好きな人にはたまらないお城です。時間のある人なら一日遊べます。大嶽城跡に登るのもいいです。ただし、翌日の筋肉痛は覚悟してください。

    ( せんべい)

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    最寄りのJR河毛駅には浅井長政公の具足(レプリカ)があったり、河毛駅前には長政公とお市の座像があります。駅の構内で小谷城の資料やお土産が買えます。

    ( いそ)

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    秋は一部、松茸山。入れないところがある。

    ( 半兵衛)

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    1998年に全国山城サミットが小谷で開かれたそうです。滋賀、新潟、石川、兵庫など全国八県の十六市町村が1994年から続けているサミットで、市町村の交流を深めることが目的だそうです。浅井家ゆかりの小谷城跡のある湖北町で今回は、10月3日から2日間開催。安土城郭調査研究所所長の基調講演などがあり、各代表がそれぞれの山城を自己紹介したり、戦国鍋を囲んだパーティーを開くそうです。
    渋い…。山城も交流を深めるためのツールとなっているようです。また、4日には、小谷城ふるさと祭りがあり、朝倉太鼓や能當流砲術が披露されるとのこと。

    ( 滋賀観光おすすめ隊)

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    城が細長く山全体に見所あり。遺構が良好に残存。誰もいないので見やすい。

    ( KNR)

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    小谷城の水源(飲料水)の謎 馬洗池の水は,はるかに遠い天吉寺山の元池からサイフォン仕掛のトイで採って来ていた。その名残りが今も虎姫町三川に元三大師の井戸替え行事だという伝承がある。

    ( 浅井備前守)

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    山王丸跡の石垣には圧倒されました。野面積みで苔が生えていて武士がこの石垣を登って城を落としたんだと回想させるぐらいの迫力です。そして大広間から虎御前山方面を見る景色と、大獄砦からの景色が最高!

    ( KNR)

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    北近江は戦国時代と大変かかわりが深い土地です。北には賎ヶ嶽古戦場、南に姉川古戦場、石田光成出生地、小堀遠州出生地、南東には長浜城、国友鉄砲資料館、など、それぞれの村がさまざまな伝承を持っています。同じ湖北町内には山本山城跡、尾上城跡(今は集落)があります。

    ( じもっち)

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    小谷城は中世4大山城のひとつ。他は越後春日山城、能登七尾城、近江観音寺城です。毎年秋には「小谷城城祭り」が開催され、学識者による基調講演、手作り甲冑の武者行列、発掘調査の現場での説明などが行われます。浅井長政埋蔵金伝説などというのもありますが…やはり古戦場なので幽霊話も数知れずあります。訪れる時間帯によっては、暗くなるまでに下山できないことがあります。道に迷いやすいのできをつけて。

    ( じもっち)

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    小谷城、正規ルートで城趾まで登るのも良いが、ここは一つ、陥落の際のルートである清水谷からの登頂をしてみては。ただし、小丸に辿り着くまでは、どうしようもないほどの獣道なので、素人では登れません。詳細の地図と、周到な準備が必要です。

    湖北町速水にある町役場に寄ってみるのも吉。教育委員会では、城趾の発掘を行っているので、担当者に詳しい話が聞けます。私も発掘品を見たことがありますが、古銭や木簡の破片などが出てきていて、その辺の話も聞けると思います。

    小谷城のふもと、湖北町児童館の西側で知善院という建物の遺構が発掘されています。小谷城の歴史上重要な遺品が発見されるかもしれません。また、春から夏にかけて、小谷城の再調査が町でされる模様。

    湖北町では年に一回、「ふるさとまつり」が催されています。壮大な武者行列や国友鉄砲の射撃実演などがあり、必見です。

    小谷城本丸は茅葺き屋根と思われる。発掘調査では屋根瓦が全く発見されていないことからも伺える。また、小谷城は陥落の際放火されずに残り、その柱などが長浜城に使われたという。

    小谷城ふもとの小谷寺には、浅井家三代と、姉川の合戦で戦死した兵士の霊が祀ってあります。小谷寺は、鬱蒼とした林の中にあり、いかにも何か出てきそうなところです。私は小谷寺の窓という窓に顔のようなモノが写っている写真を撮ってしまったことがあります。要注意です。

    小谷食堂は、地元人にはすこぶる不評です。また、小谷食堂ができる前は「青龍」というラーメン屋でした。

    ネタ5に関連しますが、秀吉は、しばらくの間(長浜城完成までか?)小谷城または小谷の地に滞在していたようです。その証拠に、長浜や大阪(大阪はうろ覚えで間違ってるかもしれませんが)には、湖北の地名である「郡上」や「別所」などの地名が存在しているそうです。

    小谷城の歌なるものが存在します。小谷小学校で毎年行われていた城祭りという行事で歌っていました。歌詞はもう忘れてしまいましたが、何とか探し出して大広間で歌ってみましょう。戦国の情景が広がってきます。

    ( muraJun)

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    団体の方を対象にボランティアガイドがあります。湖北町観光ボランタリーガイド協会、TEL:0749-78-1001(要予約)

    ( 半兵衛)

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    小谷城山麓の浅井町平塚の集落の中にある「実宰院」は、長政の姉が尼として庵を営んだもので、その山門は小谷城・搦手門の移築だそうです。寺の本尊の観音菩薩も小谷城京極丸に安置されていたものです。小谷落城時にお市の方の三人の娘達は、秀吉によって信長のもとへ母子共に送り届けられたではなく、この寺にかくまわれていたと地元の伝承にはあります。又、長浜市田村の福田寺は浅井御殿と呼ばれ、小谷城の御殿の移築だそうでどちらの寺のものも建築学的な立証がなされたものではないそうですが、なんとなくロマンティックな伝説でいいですね。

    ( 佐助)

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    淀殿最後の地は大阪城。大阪東梅田の太融寺に淀殿の墓があり、小谷城の石が置かれているそうな。

    ( shirofan)

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